研究旅行奨励制度実施報告

オランダにおける地図の情報偏在

本研究旅行の目的は、ICT環境が整備された現代において、地図内の情報がどのような影響・意図を受けて製作されるのか、またそれと同時にどのような情報の偏りが生じるのかを調査することである。公的機関Kadaster製作のOpenmaps、民間企業製作の地図を参照・比較しながら、首都アムステルダムを中心に諸都市でフィールドワークを行い、地図における情報の偏りを調査する。
ICT環境の整備により、OpenmapsやGoogle MapsなどのGISソフトが開発・利用され、カーナビや歩行者ナビとして我々の日常にも応用されている。これらのナビは用途や目的が明確であるため、道を色濃く表示したり速度制限を表示したりなど、情報の偏りが生じている。この偏りは、地図上だけで見て取ることは困難であり、現地を歩くことによってはじめて記載情報の偏りと現況との比較が可能になる。
元来、オランダは低い海岸線が北海に面しており、高潮で多数の死者が出るほどであった。しかし「世界は神が創ったが、オランダはオランダ人が作った」と言われるように、オランダ人は土地を干拓して国を守り続け、発展させてきた。またオランダは貿易において重要な要衝に位置する諸都市を抱えており、運河や港が多く見られる。以上のように、オランダは地図に与える影響として十分な地理的特徴を有しており、これらが地図に強弱をつけて示されていると考えられる。
ベームステル干拓地はオランダ史上初の干拓地であり、その後転用が繰り返され、現在は世界遺産として当時の景観を保っている。その特徴として建造物と農地とが理路整然と区画されており、この場合は地図上ではどのように示されるのかを調査することで、世界遺産として生きる農地は交通などの人工的な要素を強調するのか自然文化的な要素を強調するのか地図製作側の意図と思惑が読み取れるであろう。
ワールハーヴェンやユーロポートは商業的な港である。これらの港をOpenmapsと民間製作地図を参照・比較することで、どのような情報の偏在が見られるのか調査することができ、どのような観点からこれらの港が地図的に重要か読み取れるであろう。
水利防塞線群は、かつて他国からの侵略に抵抗するために建造された要塞である。水辺に建造することで、オランダ側は有利な地形を生かして自らの国土を守ろうとした。水利防塞線群がオランダとって未だ重要であるか、地図を参照・比較することで読み取れるであろう。

“異文化”混交のシチリア研究 ―教会建築・装飾における多文化性の現地調査―

この研究旅行では、①聖カタルド教会の詳細な現地調査を行い、特に、上記研究者ディ・リベルト氏による論考のポイントを網羅的に観察・確認しながら、建築と装飾に関する学問的データ収集を行う。また、➁聖カタルド教会とほぼ同時代に帰属する、11~13世紀のパレルモ市内の聖堂、および、パレルモ近郊都市モンレアーレ、チェファル、さらに、イタリア半島南部プーリア州などに点在する複数の聖堂に関してフィールドワークを実施しながら、聖カタルド教会と同様の建築的要素を含む建造物との比較検討を行う。これらの現地での研究調査活動を通して、問題の聖カタルド教会の異文化混交的特徴とその独自性を、より顕著に浮き彫りにしたい。以上、➀と➁の2点が、本研究旅行の主な目的である。

「クィア」を考える ―現代フランスにおける大衆への表象について―

今⽇のフランスでジェンダーにまつわる事象がどのように表象されているかについて、市⺠の視点から調査する。
現代フランスのメディアで同性愛やジェンダーレスを前⾯に押し出した表象物(例えばジェンダーレスな⾐装やメイクなどで知られるモデルSofia Steinberg、同性愛を前⾯に押し出したモデルPierre Amaury Crespeau、ファッションブランドDIOR の広告など)をよく⾒かけるが、先⽇ミュシャ展で商品的・性的対象としての⼥性イメージを強く押し出した作品を閲覧し、両者のギャップに驚いた。フランスは⽇本に⽐べて「クィアなもの」に寛容であるように感じられるが、実際のフランスの現場におけるジェンダーの表象についてその特徴を調査する。

南ドイツにおけるゴシック建築、ネオゴシック建築

レオナルド・ダ・ヴィンチの「アルノ川流域図」を歩く―ヴィンチ村からピサまでの自然景観と素描を比較しながら―

第2次世界大戦後の欧州諸国における戦後処理-ドイツ、チェコ、ポーランドを巡って-

医療と「癒し」の歴史研究―古代アスクレピオス神崇拝から近世の歴史を辿る―

古代ローマのモザイク画に描かれた娯楽―世界遺産ピアッツァ・アルメリーナのカサーレ別荘調査を中心に―

朝・昼・夕方・夜の4つの顔―イタリアモザイク装飾から見る光の反射と今後の課題―

2018 吉井景子、井上由梨

和菓子とジャポニスム:虎屋を中心に考える