教員紹介

金縄 初美

ゼミのテーマ

民族文化から中国社会を読み解く

 中国には56の民族が居住しています。各民族の文化が長い歴史の中で育まれ、相互に影響を与えたことにより、中国文化の多様性が生み出されました。また、モンゴル族、カザフ族、タイ族、ハニ族など多くの民族は中国と国境を接した国々にも同民族が暮らしており、国境を越えて民族文化が共有されています。ゼミでは主に東南アジアと国境を接している中国西南地区の少数民族文化を取り上げ、多様な民族文化を学ぶことを通じて、複眼的視野をもって文化を理解する視点を養うことを目指しています。

ゼミの紹介

 中国語圏における民族文化をめぐるジェンダー、観光開発、教育、言語、信仰、神話、文化変容などの問題に関する文献を輪読し、互いに意見を交わし、試行錯誤を繰り返しながら考えを深めていきます。
 中国語の習得も力を入れており、中国語の文献を自分の力で読み解き、中国語を用いてコミュニケーションをとることにより、より深く中国文化を理解することを大切にしています。

履修希望科目

  • 1年次:中国語初級Ⅰ、中国語初級Ⅱ、中国語初級Ⅲ
  • 2年次以降:中国民族文化論A/B、中国語中級Ⅰ、中国語中級Ⅱ、実用中国語A/B、
  • 3年次以降:専門中国語、中国語上級

これまでの卒論テーマ

 中国語圏の文化に関するテーマを中心として、各自興味や問題意識を持っている事について話し合いながら決めています。これまでの卒論のテーマは以下の通りです。

2017年度:

「台湾における現在の鄭成功像―台湾開拓から355年の変遷を経てー」  

2018年度:

「霧社事件の真相―沈黙が開く虹の向こうのあけぼの」

「上海におけるモダンガールの働きと影響」

「日中韓の箸文化」

「禅と茶の関わりについて」

「陰陽五行説からみる古代中国の犬文化」

「映画『悲情城市』から見る激動の台湾を生きた人々」

「『三国志演義』から学ぶリーダーに必要なもの」

「多文化共生と移民 観光立国を目指す日本の今後の政策について」

「中国の大学教育制度と大卒者の実態」

2019年度:

「青磁を通してつながる世界 ―青磁の魅力とは一体何か―」

「『一帯一路』構想における文化的影響について」

「中国における結婚と家族のかたち」

「上海租界と日本人 ―100年とこれから―」

「台湾におけるアイデンティティの変遷」

「江戸時代長崎の唐人貿易と長崎の文化」

「歴史問題からみる日中関係」

「インバウンドと福岡 〜訪日中国人観光客を中心に〜 」

「二国間に揺らぐ歌姫 ~テレサ・テンと李香蘭~ 」

「日中十五年戦争における歴史認識の違い―共通歴史認識の重要性について―」

「中国鏡の有する機能 ~北部九州出土の漢式鏡を中心に~」

「中国の教育改革の裏側 ~都市部と農村部の教育格差~」

自己紹介

 福岡県で生まれ、約2年間の中国での留学や研究期間以外は福岡で過ごしました。
 西南学院大学卒業後、5年間企業で勤め、その後本学大学院に社会人入学し、中国少数民族モソ人の母系社会について研究を始めました。日本と似ているところが多いといわれる中国西南地区の少数民族に関する研究では、現地調査でも共感できることが多かった一方、ダイナミックな自然環境のなかで過ごす人々の思考のなかに醸成された「寛容」「協調」というものに大きな刺激を受け、その刺激が「もっと知りたい」「もっと学びたい」という気持ちを持ち続けることの原動力になったと思います。
 民族学の醍醐味は、現地の人々の「語り」に耳を傾け、他者の立場に立って考える実体験をもつことができることだと思います。今後は、急激な社会変化に伴って変容する「文化」の保存に現地の人々の声を聞きながら共に関わっていけたらと思っています。
 趣味は旅行と民族衣装集めとグルメです。民族衣装のデザインや制作に込められた作り手の思いを知り、旅先で縁があれば民族衣装を集めています。旅の最大の楽しみは「ローカルフード」を食べること。地域性豊かな中華料理を食べるのは中国に行く楽しみの一つです。昨今、将来迎えうる食糧難にそなえ、日本でも「昆虫食」が注目されているようですが、昨年、中国少数民族ハニ族のお祭りに参加したときに様々な「昆虫食」を知りました(なかには目をつぶって飲み込んだ虫もありましたが)。長年育まれてきた「ローカルフード」にはたくさんの知恵がつまっているものですね。

読書案内

■『東アジアで学ぶ文化人類学』(上水流久彦、太田心平、尾崎孝宏、川口幸大編、昭和堂、2005)

中国、韓国、モンゴル、日本など、東アジアでフィールドワークを行う研究者たちが、現地での事例をもとに家族と親族、宗教、エスニシティなど文化人類学の基本的テーマについて検討され、さらにグローバル化に対応する問題や人類学的実践など新しいテーマについても取り上げている。

■『天平の甍』(井上靖、新潮社、1957)

遣唐使として大陸に渡った2人の僧侶が在唐20年の後、高僧鑑真を伴って帰国した歴史をもとにした歴史小説。荒れ狂う大海を越えて唐に渡った若き僧侶たちの強い信念に心を打たれ、何度も読み返しています。

■『チベット滞在記』(多田等観、牧野文子編、講談社学術文庫、2009)

約100年前の西本願寺の僧侶多田等観のインド・チベットへの留学記。当時のきな臭い世界情勢のもと命がけで渡ったインド・チベットでの滞在手記と人間味あふれる物語に引き込まれます。

■『越境 ユエジン』(東山彰、集英社、2019)

本学出身の直木賞作家・東山彰の短編エッセイ集。痛快なエピソードや「越境」つまり「境界線」を越えることに勇気と安心を与えてくれる一言が刺さるエッセイなど。読んだ後には少し自由になった気になります。

■拙著『つながりの民族誌 中国モソ人の母系社会における「共生」への模索』(春風社、2016)も参照してください。

おすすめサイト

駿河台出版「世界はことばでできている」

https://www.e-surugadai.com/surugadai-selection/surugadai-selection/

中国少数民族の文化と言葉について、各民族言語の研究者が自ら撮影した写真付きで紹介されています。

関連リンク