教員紹介

伊藤 慎二

ゼミのテーマ

日本とアジア・太平洋の比較考古学

 考古学の方法と考古学の資料(遺跡・遺構・遺物)から、人類の歴史を考えます。現在の日本国の領域に展開した各時代の多様な文化の成り立ち、またはそれらに関連・近似するアジア・太平洋地域の考古学的研究をおもな対象にします。

 なお、私自身の専門は、琉球列島(沖縄県、鹿児島県トカラ・奄美諸島)の先史時代を中心に、日本の縄文時代と同時代のロシア極東の新石器時代・オセアニアの先史時代などに関する研究をしています。日本の中世~近世考古学にも関心をもっています。

ゼミの紹介

 考古学はとても面白いです。学べば学ぶほど、なんの変哲もないように見過ごしていた周囲の景観が地下に膨大な歴史を秘めていることに気づき、少しずつそれらが読み解けるようになります。民族や文化の違いを越えて人類の歴史に興味をもつ人であれば、その知的発見の意外性や身近さの深みにはまります。

 考古学を学ぶためには、他の文系学問分野と同じ教室や図書館での勉強のみでなく、外に出て直接遺跡や遺物から学ぶ理系的な実体験や探究心がとても大切です。それらをより早く多くいとわない人ほど、遠い過去の人々のかすかな語りかけを聞き取れる幸運な瞬間が訪れます。もちろん、本学と本学部の得意とする外国語を深く学べば、その可能性の地理的広がりはさらに大きくなります。

 このような考古学独自の興味深さに直接迫る探究を自ら積極的に試みたい方を、大いに歓迎します。

履修希望科目

 考古学に直接関係する分野(歴史学・人類学・民俗学・地理(地誌)学など)の科目を多く受講することが望ましいです。また、博物館学芸員や都道府県市町村の文化財担当専門職員を目指す学生は博物館学芸員課程の科目を受講する必要があります。その他の科目であっても、人類の文化のすべてを対象にする考古学とはかならず接点があるので、その接点を意識的に探究しつつ受講すれば、いずれかならず役にたちます。語学系の科目は、それらすべての可能性を大きく広げてくれます。

これまでの卒論テーマ

(2015年度)
縄文時代の九州地方における黒曜石の利用、縄文時代におけるウルシの利用と起源、南北九州における縄文・弥生移行期の土器様相、弥生時代の農耕社会の変遷について、弥生時代~古墳時代にかけての宗像地域、北部九州における鉄滓出土の古墳について、琴からみる楽器の考古学、北部九州における古代の土器製塩と大宰府、博多遺跡群の出土銭貨、中世の人間とイヌの関係:博多遺跡群と草戸千軒町遺跡の比較、大友氏の対外貿易:出土陶磁器を中心に、髪型からみる古墳時代~近世の日本の政治と社会、古代女性像をジェンダー考古学から読み解く、考古学研究へのジェンダー的視点の影響力、地方伝承がもたらした遺跡の在り方、遺跡の観光活用と地域活性化

自己紹介

 江戸の町の記憶が残る東京都港区で生まれ育ちました。ビルやアスファルトだらけの景色の中に、縄文時代の貝塚・古墳時代の古墳・戦国時代の城跡・江戸時代の石垣や庭園が、鮮やかな異彩を放ってわずかに残っていることに気づき、考古学や歴史学に夢中になりました。今思い返すと、福岡藩主黒田家の江戸の菩提寺や巨大な墓塔近くも、子供時代の遊び場所のひとつでした。学校の友人や周囲の隣人には、在日コリアンをはじめ、いろいろな国の文化・言語をもつ人々がいて、自然と異なる地域や国々の遺跡にも興味関心が広がりました。大学・大学院では、縄文時代や琉球列島・ロシア極東・オセアニアの先史時代などについて学びました。母校の大学で初めて教壇に立たせて頂いた後、日本の異文化交流の表玄関で日本最古級の都市にある自由で国際的なこの大学で、2014年から皆さんと一緒に考古学を学ぶ幸運に恵まれました。

読書案内

考古学者の人物像と考古学のあゆみを知る本

藤森栄一 『心の灯』 (筑摩書房・1971年)
相沢忠洋 『「岩宿」の発見』 (日本図書センター・1998年)
板橋旺爾 『奴国発掘』 (学生社・1973年)
森浩一 『僕は考古学に鍛えられた』 (筑摩書房・1998年)
加藤晋平 『マンモスハンター』 (学生社・1971年)
金元龍 『随筆集:日々の出逢い』 (講談社・1990)
サリー=グリーン 『考古学の変革者』 (岩波書店・1987年)
アンドレ=ルロワ=グーラン 『世界の根源:先史絵画・神話・記号』 (言叢社・1985年)

歴史や社会・文化の見方、教育の考え方、文章の美しさなどで強く印象に残った本

本多勝一 『事実とは何か』 (朝日文庫・1984年)
千葉徳爾 『はげ山の文化』 (学生社・1973年)
松山義雄 『狩りの語部:伊那の山峡より』 全3巻(法政大学出版局・1977~1978年)
山川菊栄 『わが住む村』 (岩波文庫・1983年)
勝海舟 『氷川清話』 (講談社学術文庫・2000年)
保科百助 『五無斎保科百助全集』 (佐久教育会・1964年)

私のおもな著書・編著

伊藤慎二 『琉球縄文文化の基礎的研究』 (ミュゼ・2000年)
高宮広土・伊藤慎二編 『先史・原史時代の琉球列島:ヒトと景観』 (六一書房・2011年)
伊藤慎二・山添奈苗編 『東アジアにおける新石器文化と日本』 Ⅲ(国学院大学・2006年)

おすすめサイト

■考古学の文献を探す

書籍:「CiNii Books」 http://ci.nii.ac.jp/books/?l=ja
論文:「CiNii Articles」 http://ci.nii.ac.jp/

■考古学の展示会・研究会・見学会・就職情報を探す

「考古学のおやつ」 http://www.ops.dti.ne.jp/~shr/
「考古学通信」 http://kouko.so-hot.jp/arcinfo/index.html

■参考:「研究」とは何か?

「トンデモ「研究」の見分け方・古代研究編」  http://www.hmt.u-toyama.ac.jp/chubun/ohno/tondemo.htm 

関連リンク