教員紹介

柳沢 史明

ゼミのテーマ

近現代以降の世界を視野に入れた芸術文化・表象文化研究

フランスやフランス語圏アフリカを出発点に、世界の様々な芸術作品や美的な表現が形成・受容・表象されてきた歴史や文脈を学びます。絵画や彫刻のみならず、身体装飾や宗教儀礼用の品などを含む造形文化全般を手がかりに、近現代世界を取り巻く芸術や表象をめぐる思想を一緒に考えていきます。

ゼミの紹介

演習では主に、近現代(19~20世紀)の芸術や表象文化に関する文献(英語もしくは仏語)の講読を行います。この時代、西洋において、そして日本においても「芸術」とそうでないものとの区分や比較、はたまた二者間のカテゴリーの移動が生じ、それらを流布する制度や語りが確立されてきました。その歴史や研究を振り返ることで、「芸術」とは絶対的なものではなく、時代や状況に応じて変化するものであり、相対的なもの、歴史的なものであることが、さらには現代の我々の価値観そのものもまた相対的なものであることが分かると思います。このゼミでは、近代西洋美術を相対化する「芸術」や「表象文化」を扱った文献を輪読し、多様な美的表現・造形表現とそれらを取り巻く思想や歴史を学ぶとともに、それぞれが自らの関心に沿って「芸術」や「表象文化」を語り、説明する力を身につけることを目的としています。

履修希望科目

「表象文化」関連科目および「美術史」「美学」の内容を前提に演習を進めるので、これらの科目は可能な限り履修しておいてもらいたいです。また、授業や演習にてフランス語由来の単語や、近代フランスやフランス語圏アフリカの諸文化を扱うことも多いため、「フランス語」の初級・中級の履修が望ましいです。フランス語はフランスのみならず、北アフリカ、西アフリカ、カリブ諸地域、ベトナム等でときに英語よりも有用な言語であり、それらの地域の文化を学ぶ際、そしてなぜそれらの地域でフランス語がいまなお通用するのかを考える際にも役に立つと思います。自らの世界観や価値観を拡張するためにもぜひ触れてもらいたい言語の一つです。

自己紹介

生まれてから高校卒業までは長野県で、予備校時代に上京してからは、大学・大学院・ポストドクターの時間の大半を東京で過ごしてきました。知らない土地で新しい文化や街並みに埋もれ、新たな繋がりを築いていくことは常に不安でもあり楽しみでもあります。研究上の専門は広く言えば「芸術学」「芸術文化研究」「植民地言説研究」となります。古典的な絵画・彫刻作品よりは、あまり知られていない造形物や表現、「芸術」と分類されるか悩ましいもの、さらにはそれらを取り巻く「表象」に関心があります。より具体的な研究対象としては西アフリカの造形物をめぐる表象や、植民地状況の造形表現における変化を扱っています。関心ある方は、「関連リンク」から私のresearchmap上のページに飛んでいただければ過去の業績等が閲覧可能です。

読書案内

赤瀬川原平『芸術原論』(岩波書店 1988:岩波書店 2006)

稀代の芸術家(破壊者?)であると同時に芥川賞を受賞する程の書き手でもある赤瀬川原平による名著。ネオ・ダダの美術家から路上の探索者へと至った赤瀬川自身の回顧からは、戦後日本の美術動向だけでなく、「芸術」という概念にとらわれず多種多様な価値を世界に見出していく彼の飽くなき好奇心が垣間見えてくる。印象派からデュシャンまで、様々な近現代の美術家に対する分析も軽快でありながらはっとさせられる着眼点に富んでいる。

J・クリフォード『文化の窮状 二十世紀の民族誌、文学、芸術』(人文書院 2003)

文化人類学を専門とする著者による、20世紀文化論。とりわけ、非西洋の造形物を西洋が領有し、自らの博物館・美術館へと収集・展示するシステムに潜む政治性や力学を明かす第九章や第一〇章は、世界の様々な造形物や美的表現を考え語る際には必読のテクストである。世界各国の展覧会や展示施設は本書の影響下に新たな展示のパラダイムへと突入したとも言えよう。

松浦寿輝『エッフェル塔試論』(筑摩書房 1995:筑摩書房 2000)

エッフェル塔をめぐる様々な語りやイメージを掘り起こし、華麗かつ魅力的な文章でエッフェル塔という「記号」を解読する、「表象文化」研究の金字塔。当時の設計資料のみならず、文学作品、写真、絵画、映画等、エッフェル塔をめぐる種々の表象の接続とその読解は、研究対象そのものの新たな魅力を読者に呈示するだけでなく、今なお新たな視点から研究されるのを俟つ資料群の存在を読者に示唆してくれよう。

おすすめサイト

Gallica(ガリカ)

フランス国立図書館による「恩寵」とも言えるサイト。著作権等が失効した数多くの歴史的な新聞・雑誌類を無料で検索・閲覧できる。20世紀初頭までのフランス文化研究は、このサイトの開設・発展とともに世界的に飛躍したのではなかろうか。

https://gallica.bnf.fr/accueil/fr/content/accueil-fr

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