
教員紹介
大坪 哲也
ゼミのテーマ
政治、宗教、哲学の観点から、アメリカと世界の問題について考える
大坪ゼミでは欧米の哲学思想やキリスト教について学びながら、アメリカ政治と宗教の問題や戦争、世界の分断や対立の問題などを考えています。
ゼミの紹介

大坪ゼミは、政治、宗教、哲学について学んでいきます。例えば、
- 欧米社会を理解するうえで「キリスト教」の影響は避けられません。演習では、キリスト教を土台としたヨーロッパの思想について学んでいきます。キリスト教と哲学はどのような影響を互いに及ぼし、西洋的な伝統や基礎を築いてきたのだろうか。
- アメリカという国を理解するために、多くの日本人にとって分かりにくいのが、「宗教」という問題です。なぜアメリカの選挙では宗教的な価値観が反映された政策が争点となるのか。宗教はアメリカ政治にどんな影響を及ぼしているのだろうか。世界最大のキリスト教国アメリカを、「政治と宗教」の観点から考えます。
- 現代を理解するためには、国際政治について考えるのも有益でしょう。なぜ戦争が起こるのか。「戦争と平和」の問題は、ロックやルソー、ホッブス、マキャベリ、カントなどの思想家、哲学者たちによって議論の基礎が作られました。原因は人間(本性)にあるのか、国家(政治体制)にあるのか、国際システムにあるのか。国際政治の議論は、哲学や神学の課題でもあります。以上のように多角的な視点で、政治、宗教、哲学的なテーマを捉えてみたい。
履修希望科目
哲学、歴史、社会科学の授業を履修してください。宗教に関心のある方は神学もお勧めです。
担当科目は以下の通りです。
アメリカ宗教文化論A/B、宗教学A/B、キリスト教学A/B、キリスト教人間学A/B
※思想系の授業ではキルケゴール、ヘーゲル、カール・バルト、ラインホールド・ニーバーなどの専門的なテキストを扱います。
※宗教系の授業では宗教学、政治学、国際政治などのテキストを幅広く多角的に扱います。
これまでの卒論テーマ
・アメリカは深刻な分裂により内戦が起きるのか
・ソーシャル・キャピタルの低下が齎す教育格差
・人工妊娠中絶を巡る政治的対立
・メルティングポット論再考
・カナダの多文化主義
・W・E・B・デュボイスと黒人解放運動
・ラインホールド・ニーバーの政治的リアリズム
・アメリカのニーチェ
・アメリカのアジア戦略
・核拡散と核抑止
・沖縄米軍基地問題と日米地位協定の改定
自己紹介
福岡市早良区生まれ、博多区育ちです。24年ぶりに福岡に帰ることになりました。16歳の時にキルケゴールという哲学者の本を読んだことがきっかけとなり、これまで哲学や宗教の問題を追求してきました。彼の思想はヨーロッパの戦間期に注目されましたが、現在では国際的な研究動向が大きく変わり、同時代の哲学、神学、文学のコンテキストから実存思想を問い直す新しい研究に取り組んでいます。教会の牧師や宗教主任の経験があり、キリスト教学科目を担当しています。
最近ではアメリカ政治と宗教の問題に関心を抱いています。「政治と宗教」を焦点にアメリカ政治における新保守主義、宗教右派と呼ばれる団体の影響力やアメリカの対外政策の問題を考えています。イラク戦争やウクライナ戦争をきっかけに、「戦争と平和」の問題についても考えています。
読書案内
授業で扱うテキストやお勧めの本などを紹介します。ひとつの専門分野に特化したスペシャリストになるのもよいですが、幅広い知識を活用するジェネラリストになることも重要です。
■G・W・F・ヘーゲル『宗教哲学講義』山崎純訳、講談社、2023。
■セーレン・キルケゴール『新訳 不安の概念』村上恭一訳、平凡社、2019。
■ルドルフ・ブルトマン『共観福音書伝承史』(『ブルトマン著作集』第1-2巻)加山宏路訳、新教出版社、1983。
■ハンナ・アーレント『新版 全体主義の起源』大久保和郎他訳、みすず書房、2017。
■ティモシー・スナイダー『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』布施由紀子訳、筑摩書房、2015。
■ラインホールド・ニーバー『道徳的個人と非道徳的社会』千葉眞訳、岩波文庫、2024。
■ジョージ・F・ケナン『アメリカ外交50年』近藤晋一他訳、岩波書店、2000。
■ハンス・モーゲンソー『国際政治』原彬久訳、岩波文庫、2013。
■サミュエル・ハンチントン『文明の衝突』鈴木主税訳、集英社文庫、2017。
■ケネス・ウォルツ『人間・国家・戦争―国際政治の三つのイメージ』渡邉昭夫・岡垣知子訳、勁草書房、2013。
■スコット・セーガン/ケネス・ウォルツ『核兵器の拡散』川上高司・斎藤剛訳、勁草書房、2017。
■ジョン・J・ミアシャイマー『新装完全版 大国政治の悲劇』奥山真司訳、五月書房新社、2019。
■ジョン・J・ミアシャイマー/スティーヴン・M・ウォルト『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』副島隆彦訳、講談社、2007。
■スーザン・ジョージ『アメリカは、キリスト教原理主義・新保守主義に、いかに乗っ取られたのか?』森田成也・大屋定晴・中村好孝訳、作品社、2008。
■エマニュエル・トッド『西洋の敗北』大野舞訳、文藝春秋、2024。
■リチャード・ホーフスタッター『アメリカの反知性主義』田村哲夫訳、みすず書房、2003。
■ジョージ・パッカー『イラク戦争のアメリカ』豊田英子訳、みすず書房、2008。
■マイケル・ウォルツァー『正しい戦争と不正な戦争』萩原能久訳、風行社、2008。
■カート・キャンベル『アメリカのアジアシフト』村井浩紀訳、日本経済新聞社、2017。
■エルブリッジ・コルビー『拒否戦略』塚本勝也・押手順一訳、日本経済新聞社、2023。
■ジョージ・ボージャス『移民の政治経済学』岩本正明訳、白水社、2017。
■ロバート・D・パットナム/デヴィッド・E・キャンベル『アメリカの恩寵 宗教は社会をいかに分かち、結びつけるのか』柴内康文訳、柏書房、2019。
■ロバート・D・パットナム『われらの子ども 米国における機会格差の拡大』柴内康文訳、創元社、2017。